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ポニョ 5歳

先週、「崖の上のポニョ」を観た。
どこまでいっても、宮崎駿監督は前線にいるんだーと思った。


上映開始後にさっそく観に行ったのも、たまたまNHKの朝のニュースでポニョの宣伝を見て、宮崎駿監督の興味深いコメントを耳にしたため。

アニメーションの中にCGを取り入れてきた駿氏が辿り着いた結論。
「なんだかわからないけど、どうも機械で作ったものじゃだめで、
どうやら人って、人が手で描いたものでなきゃ感動しないみたいなんですよね。」。

というわけで、ポニョは、一切CG無し、セル画枚数は過去最高。海の中は、ゆらぎを表現するため背景も全部動かしたという。
やはり人力は強いのか?という根深い問題に、宮崎監督が経験から結論づけた。手描き一本でやってきた人の手描き信仰とは、ちょっと説得力が違う。ていうか、全然アニメ界やめる気ないじゃない!

それと、「宮崎駿のレイアウト術」というTV番組で、「折り返し地点」という言葉が出てきた。まだ折り返しだったか!!(もののけか、千と千尋あたりで、折り返しきてるかと思ってた…!)いよいよこっからですかー!
(「折り返し点—1997~2008」って本が出版されたことを紹介してたんだと気付く。8/5追記)



で、観てきた。

こんなアニメ映画は初めて見た、という感覚におそわれる。

※以下、ほんの少しのネタばれあり。気をつけたけど、いやな人は読まない方がいいです。



部分的に観れば、過去のジブリ作品と似てる所もある。しかし、そういう問題じゃないんだなー、というのがわかってくる。

上映中、「自分はターゲット外である」ということを、認識していくこととなるのだ。切ない思いとともに。


この映画は、子どものために作られた、と聞く。実際、観客の子どもたちは湧いていた。

観客の子どもの中に、画面に向かってよくしゃべる子がいた。悪役が活躍すると、「こわいよー!こわいよー!どっか行って、やだもうあの人…」。
主人公の男の子がポニョを呼ぶ場面では、一緒になって、「ポニョー!ポニョー!」と力一杯、呼んでいた。つられて他の子も呼び出す。
おおよその物語の終幕が見えた頃、私の席の近くにいた女の子が、「おもしろかったね」と一言、保護者に感想を述べた。


確実に子どもが盛り上がっている場内。その声を聞いて笑う大人達。
それら全体を、作品として見せられているかのような不思議な感覚。
これはもしかして、巨大な紙芝居…??


エンドロールには、制作に関わった人達の名前が、あいうえお順で並列に表示される。声優をした、あの往年の女優「吉行和子」の名も、普通にヤ行の中に並んでいた。そうだ、5歳の子にとって、役職とかエラさとか関係ないんだ。


本当に、子ども達のために作った映画なんだ、と感じた。
今までの、“子どもも大人も楽しめる”とはひと味違う。
子どもじゃないと、ちょっとわからないところも出てくる。
観ながら「こういう表現方法もあるか」なんて考えているうちに、置いてきぼりにされてしまう。感動のしどころを見失いそうになる。そうして、自分には、もう、ポニョー!と一緒に叫ぶ発想すらないことに気付かされる。
この映画に関して、大人が自分の感覚だけで、わかるとかわかんないとか言うのは、違うんだろうな…と、観ながら感じることになる。これはけっこう切ない。ちょっと疎外感。あぁ、なんで子どもと同じように観れないんだろう。



私は、壮大な「もののけ姫」より、エンターテイメントに作り込んだ「千と千尋の神隠し」の方が好きだ。「となりのトトロ」のように、伝えたい何かがちゃんと観客に届く気がする。しかし、ここにきて「崖の上のポニョ」というまったく新しいアプローチの作品が出てきたので、比較の話じゃなくなってきた。【「もののけ姫」を作った宮崎駿が、いろいろあって「崖の上のポニョ」を作っている】という一連の流れそのものが、面白い作品みたいだ。



映画が終わると、テーマソングのポーニョポーニョポニョという呪文のようなあやしいフレーズが、頭をグルグルして家までついてくる。まるでパレード。
「おかあさんといっしょ」のパジャマでオジャマの歌のように、わけのわからないまま脳に刷り込まれる感覚を思い出す。狙って作ったんだろうか。


「崖の上のポニョ」を知るには、劇場で観ることをお薦めします。

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(一旦、しめたところで、付け加え)

宮崎監督は、既成概念をいろんな所で壊したつもりなんです、
と語っていた。
具体的に、今までと違うと、私が感じた部分。
ポニョの尾ひれ。
外が赤くて、中が白い。この白いところが、スカートみたく内側が空洞なのか、空洞じゃないのかが、私にはずっとわからなかった。ジブリは今まで、立体化した時に成立する形を描いていた気がする。どういう形状をしているのかわからないものを描いているのは、初めてじゃないだろうか。でも、この尾ひれのヒラヒラした動きには、笑った。がんばって泳いでる感じが出ていた。


悪役キャラクター以外の普通の優しい大人たちが、主人公の5歳の子が危険なことをしていても、全く注意しない場面があり、その非常識さには違和感をもった。しかし、子どもの目から見ると、注意されないことは違和感でもなんでもないだろう。悪役こそが、行く手を阻むいやな存在として描かれている。


ポニョのいもうと達が、私にはツボで、涙を流して笑った場面もあった。
かと思うと、物語の中盤、退屈だったりもした。(正直に書くと、一部寝た。)
不思議な映画だった。

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