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宇野亜喜良さんのトークショー&ライブペイント「宇野亜喜良、描く。語る」

UPがだいぶ遅くなってしまいましたが、記事まとめたので載せます。

6/26(土)に開催された、誠文堂新光社宇野亜喜良 創作の現場―Illustrator’s workshop刊行記念のイベント「宇野亜喜良、描く。語る」@高円寺 庚申文化会館に行ってきました。

以下に、
・会場の様子とイベントの流れ
・特に印象に残った話
の順で、記憶を頼りに書きます。

※文章長くなってしまったので、ポイントだけ読みたい方は、<特に印象に残った話>からどうぞ。

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<会場の様子とイベントの流れ>

会場に着くと、加賀まりこさん似の女性がいたりして(服装は上下白でガーリーな感じでまとめていらした)、その不思議な存在が宇野亜喜良さんのイベントっぽかったです。また、参加が予約制なこともあって、客席エリアはけっこう真剣に好きな人が集まっているようなムードが静かに充満していました。

(※加賀まりこさん似の方は、野村直子さんだったようです。無知で失礼しました。7/9追記)

そして、ついにご本人登場!


まず宇野亜喜良さんからの始まりのご挨拶として、
これは本を売る為のイベントで、自分の本があまり売れないので出版社の方の為にももっと本が売れるといいなという気持ちでこのイベントをやります、なので皆さんできれば本を買って下さい(笑)、だけど、ただトークをするだけで本を買って下さいというのもアレなので、もっとエンターテイメントなことをやりたい、楽しんでもらえることをやりたいと思い、ライブペイントもすることにしました、
というようなお話がありました。


宇野さんが座っている背後の壁には、左右に大きめの2枚のダンボールが貼ってあり、ライブペイントは2作品!観れました。


一作目は、昔若い頃にゲイバーに置かれるマッチのケース用に描いたイラストレーションを思い出しながら描きます、とのこと。少年がメインで、動物が周りにいます。上下をひっくり返すと、デーモンが見えるという作品でした。
もう一作は、少女がメインでした。


昨日考えて描いたというラフを見ながら、木炭でサラサラと線を描き、ところどころ布でぼかし、パステルのようなもので一部に色をつけていました。


絵を描きながら、ここのところ高円寺に通っているんです、というお話が始まり…。
高円寺といえば阿波踊りで、「阿波おどりホール」というものもあり(阿波おどりの予約が入っていない時には一般貸し出しも行う)、そこで岸田理生さんの「悪徳の栄え」を引用した寺山修司さん原作の演劇「青ひげ公の城」が公演されることになって、美術を担当する宇野亜喜良さんは大きな絵を連日描きにいっているとのことでした。
「阿波踊りっていうのは、体に泡をつけた女性が踊る…」と品のある穏やかな口調でかまし、会場に笑いが起こって、和やかムードになりました。
(その後もちょいちょい、宇野さんの言うところの“猥談”をまじえてのトークでした。でも常に品があって美しい。)


2つの絵が完成すると、本格的にトークに移りました。


今回のイベントの販促対象である『宇野亜喜良 創作の現場』を出版した誠文堂新光社 + 他に宇野さんの本を出版している幻戯書房、エクリ、マートル舎、のあわせて4社の出版社の社員さんが、それぞれ自社の本をプレゼンテーションするというコーナーもありました。
(これが個人的に面白かった!)

最後にプレゼンした幻戯書房の女性の方がとてもお話が上手な方で、急遽そのまま司会進行兼インタビュアーのようになり、色々と聞き出して下さった。最終的には、編集者とイラストレーターの対談になって、とても面白かったです。

『奥の横道』幻戯書房



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<特に印象に残った話>
※細かい言回しは多少違うかもしれませんが、お話の内容を書きます

1.ずっと画家とは名乗っていなくて、自分はイラストレーター。
2.本が意外と売れない。でも過去の本が骨董品みたいになって高値で取引されている。
3.出版社から返却されなかった原画が70点ほど出回っている。(お客さんがヤフオクで落札したという原画が登場!)



1.ずっと画家とは名乗っていなくて、自分はイラストレーター。

画家・芸術家には、思想があり、“変革”の気持ちがある。
自分は“変革”したいと思っていない。
世の中のいろんなことは“しょうがない”と思っている。
絵を描く時に、何か社会に対して訴えたいことを込めることはない。
それよりも、依頼が来た仕事に対して、どういうふうな表現でこたえたら効果的か、依頼主が喜び驚くものができるのかを考えるのが好き。
だから、自分はイラストレーター。

前衛的と言われることもあるけれど、自分で前衛的になろうと思ったことは無い。
思想家ではない。
ただ、他の人がしていないこと・面白いことをしたいと思って挑戦しているだけ。



2.本が意外と売れない。でも過去の本が骨董品みたいになって高値で取引されている。

出版社の方は、僕に本の企画を持ち込む時、キラキラしている。
素敵な本を作れそう、それなりにある程度“見込める”、と期待している。
でも、いざ出版されてみると、意外と売れない。
出版社の方の顔の表情も、変わってくる。

僕は本がものすごく売れると逆に大変だと思うし、今の感じで不満も無く、楽しく暮らしてる。
でも、せっかく本を出したいと依頼してくれた出版社の方の為にも恩返しをしたいから、もっと本が売れるといいなと思う。
それに、僕も一度はヒット作を出したい。

新しく売り出す本は売れない。
ところが、何十年か前に出した過去の本は骨董品みたいな扱いになっていて、高値で取引されている。
でも、過去の本も、当時は今と同じようにあまり売れていない。
(「あまり売れなかったからこそ出回っている数が少ないので、希少価値が出てるんだと思います」と出版社の方がおっしゃってました。)



3.出版社から返却されなかった原画が70点ほど出回っている。(お客さんがヤフオクで落札したという原画が登場!)

出版社から原画がけっこう返って来てない。
それで返してもらおうと思って、100点位は返してもらえたのだけど、70点位はもう外に出回ってしまっていて、オークションやお店で安値で売られている。

(イベントに来ていたお客さんの中の一人の方が、実際にヤフオクで見つけて購入されたという絵を額装したものを、持参されていました!原画&その絵が掲載された本の、セット売りだったそう。→皆で鑑賞)

出版社の方は「あの、これを宇野さんに返すのはどうでしょう…?」と言ってみてましたが、購入された方は欲しくて身銭を切って買ったのだし、宇野さんも返してとは言いませんでした。
(他の観客は、ことの次第を見守っていた。ちょっと切ない…。複雑だ。)


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<おまけ>

イベント終了後、ライブペイントされた2枚の絵を遠目から眺めていたら、左側の腕にふわっと柔らかく当たる人が……まさかと思って見ると宇野さん…!!!
宇野さんも絵を眺めていました。
腕が触れたまま。
宇野さんにとっては私は単なる壁のようなものだったと思いますが、「このまま壁としてしばらくいたい!」と感じました。でも、ぐずぐずしていると次の一瞬にはこの状態が終わってしまいそうだったので、挨拶しました。気の利いた事が何一つ言えず、自分にがっかりしましたが…。

でも、宇野さんから、「(スクールで)絵を教えるのは去年からやめてしまったんです」というお話を直接聞けました。

自分がイラストレーションの学校(パレットクラブスクール)に通っていたおととし、宇野さんが講師でいらした回があったのですが、どうやらその年が最後だったようです。

タイミングってあるんだなぁ…、と改めて思った日でした。



★続編記事:絵が一流の人は、文章も上手い。




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