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「イラストレーション」という言葉には、絵の質を問う意味はない。

イラストレーターの都築潤(つづきじゅん)さんご本人に、都築さんのご講義について書いた私のブログの記事「イラストレーション」は、主に広告業界で使われるデザイン用語だった。を読んでいただけました…!そして丁寧なご意見を頂けました。


私の通っているイラストレーションのスクールでは、都築先生の「イラストレーション史」というご講義が毎年恒例になっているそうで、私は7月に聴講に行ったあと感想をブログに書きました。それが上記の記事です。


私が特に興味を惹かれた<イラストレーションとは何か>というお話を中心に書いていますが、実際の授業では時代別にイラストレーターを紹介されている時間も多くあり、講義の一部をとりあげた内容になっています。


まずタイトルの、<「イラストレーション」は、主に広告業界で使われるデザイン用語だった>というのは講義内でチラっと出てきたフレーズで、自分にとっては大きなインパクトを感じたのでそれをタイトルにして載せました。
(広告・デザイン・イラストレーションの3つが繋がるような内容にしたいというブログの意図もあり。)
しかし、それだと先生の伝えたい内容の主軸とは少しズレてしまっているので、先生に頂いたメールを参考に、新しい記事を掲載したいと思います。

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内容は、大きく分けると、
イラストレーションとは、図版のことだった」ということと、
イラストレーションとは、“絵の問題”ではない」の2点。


先生に頂いたメールの引用箇所をはっきりさせながら、記事をまとめたいと思います。
※【 】でくくってあるのが、引用箇所です。

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●イラストレーションとは図版のことだった●

【例えば印刷物の文字でも地でもない部分に何らかの絵や写真があれば、そこを指して「イメージ」とか「ビジュアル」とか今でも普通に言いますよね。
(ビジュアルというと文字も合わせたデザイン全体を言ったらしいですが)
そういう図版のことをすべてイラストレーションって言ってただけなんですよ。

それがだんだんと「イラストレーターが描く絵」という意味になって行ったんです。
しかし本当はイラストレーターという職業があろうとなかろうと、関係なくイラストレーションは存在するわけです。】


ちなみに、
「図版」とは、「印刷して書物に載せた図。」です。
(新明解国語辞典 第四版より)


【多くの人は「イラストだってアートだ」とか「イラストはアートではない」とか、「あれは漫画であってイラストではない」とか、そういう「絵の問題」にするでしょ。
そうじゃなくて原画がアートだろうが子どもの落書きだろうが、印刷物の図版は全てイラストレーションだと言いたいのです。】


なぜ先生がこのようなことを論じられていて、私もすごく気にかかっているのかというと、イラストレーションを教わりにきている生徒さんの中には、「これはイラストレーションじゃなくて、アートだね」と
講評で言われている方が、けっこういるのです。
聞くたびに、自分もう〜んと考えてしまいます。
そこには、イラストレーションの絵と、アート・漫画・アニメの絵とは別物だ、という感覚がある。
“イラストレーションっぽい絵”というのが存在するかのようです。


そのため、自分が絵を描くときに、「これってイラストレーションの範囲におさまってるのかな?」
と、気にかかってしまったりします。


しかし、イラストレーターには、オリジナリティを発揮して、今までにない新しいタイプの絵を確立しなければ、一流になるのは難しいという側面もあります。
イラストレーターの誰かと似ている絵では、だめなのです。
となると…?

で、続きです。

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●イラストレーションとは、“絵の問題”ではない●


【イラストレーションは「絵の問題」ではない、というのはつまり、イラストレーションたる所以が絵に内在しているのではなく、絵を取り巻く外部の状況(図版であるという状況)の問題であり、内と外とでは位相が違うということなんです。

だからパレットのような所でイラストレーションの話を講師がした時は「私の価値基準で言うところのイラストレーターが描くべき絵」といったような、括弧付きの意味でとらえると良いと思いますよ。
「イラストレーションとはこういう絵だ!」と言い切ることは不可能なのですから。

簡単なようで実は油断すると迷宮に入っちゃうような話かも知れませんね(笑)
しかしあまりにもイラストレーションを「絵の問題」として教えたり、悩んだりする人が多いので、このようにぼくの解釈を開陳してるしだいです。】

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以上で、先生のお話は終わりです。
先生のおっしゃる通り、迷宮に入ってしまいそうな話です。
あなたの絵はアートだ、と言われた生徒の方々は、自分ではイラストレーターになれればいいなぁと思いつつ、スクールの課題で絵を描いていて。
その絵に、アート魂を込めているわけではない。
逆に、アート界の側からみれば、それはアートじゃないよと思う気がします。
では、どんな絵ならイラストレーションなのか。

先生のご講義「イラストレーション史」には、そうした、もやもやとした疑問をすっきりと解決させるメッセージが込められているので、とても重要な講義に感じられました。
まさに、誰かに言って欲しいことだったのです。

「イラストレーション」という絵のカテゴリーがあるわけではない、ということなんですね。

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都築潤先生は、イラストレーションの学校の他に今度美学校でも講座を持たれることになったそうです。
美学校というのはアーティストを育成する学校なので、先生がイラストレーションとアートの領域を横断して活動されているということがわかり、凄いなぁ面白いなぁとワクワクしました。

イラストレーター都築潤さんの公式サイト


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おまけの追記:
上の記事を書いた直後に、さっそく自分が別の講師の方に「これアートですね」と言われて動揺した話
(原因は「絵一枚が、完結してるから」とのことでした。ここがミソかもしれません。)
あなたの絵はアートだ、とバシっと言われるラビリンス。

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